映画「ヴィジット」ネタバレ感想

映画

ジャンタスです。映画を観ました。

ヴィジット (吹替版)
↑Amazon prime videoへリンク。字幕版もあります。

公式サイトはこちら。

また作業中のホラーを求めて、こちらの映画をチョイス!
今度はちゃんとホラーでした。
(ホラーだと思ったらパニックスリラーだった「海底47m」はこちら。)

あらすじ:
休暇を利用して祖父母の待つペンシルバニア州メイソンビルへと出発した姉弟。都会の喧騒から離れて、田舎での楽しい1週間を過ごす予定だった。優しい祖父と、料理上手な祖母に温かく迎え入れられた2人。しかし出会えた喜びも束の間、就寝時、完璧な時間を過ごすためと、奇妙な「3つの約束」が伝えられる。夜9時半を過ぎ、異様な気配で目が覚める2人。部屋の外から聞こえるただ事ではない物音に恐怖を覚えた彼らは、絶対に開けてはいけないと言われた部屋のドアを開けてしまう。そこで2人が目にしたものとは―? (公式サイトより引用・要約)

以下、ネタバレありの感想です。未視聴の方はご注意ください。

ひとことポイント

心理的恐怖もあるが、生理的に気持ち悪いタイプの恐怖も。
吐しゃ物、排泄物などが苦手が方はちょっとダメかも?

真相は「うーん」となってしまう人がいるかもしれません

映画の終わり方はすっきりしています!

ネタバレあり感想

知らずに選んだのですが、こちら「シックス・センス」のM・ナイト・シャマラン監督の作品なんですね。
シャマラン監督の作品は多くは見ていないものの、どんでん返しが多く賛否分かれる評判をよく耳にします。
監督の名前を見てからは「この映画はどうかな?」とちょっと身構えてしまいました。

さて、映画の主人公はベッカタイラーの姉弟。
まだ10代前半の2人ですが、休暇を使い、会ったことのない祖父母の家へ泊まりに行くことになります。
弟のタイラーはイマドキの子で、大人びたラップを歌うのが得意。
姉のベッカはこの旅行をドキュメンタリー映画にすると張り切っています。

姉弟の母親ロレッタは高校生のとき臨時教員と恋に落ち、かけおちしています。
子供ももうけますが、その後彼は浮気し破局。
2人の仲を反対していた両親とは仲違いしており、彼女自身ももう15年会っていません。

しかし最近になって祖父母がネットでロレッタを見つけ、連絡をとってきました。
「孫に会いたい。一週間預からせてほしい」
反対するロレッタですが、子供たちが会いたいと言うので送り出すことにします。
母のロレッタには現在恋人がおり、恋人とすごす時間をあげたかったのも理由のひとつでした。

冒頭、親子仲が良いところが感じられてよかったです。

ロレッタは反対したものの感情的に否定するのではなく、子供たちの意見を聞いているのに好感が持てますね。

移動シーンの車や電車では陽気にみえる姉弟。
しかし父が出て行ったことで内心は傷ついており、弟タイラーは潔癖症に、姉ベッカも鏡で自分の姿を見られなくなっていることがのちのちわかります。

そうこうしてたどり着いた駅で、2人を迎える優しそうな祖父母。
穏やかな出会いで、一見ただのホームムービーにも見えるシーン。
しかしそこに現れる「MONDAY MORNIG」のテロップが「これは一週間の始まりにすぎない」ということを感じさせます。

初日はみんな明るく、タイラーが祖父母にラップを披露したり、部屋でどっちのベッドを使うかジャンケンしたり平和にすごします。
おじいちゃんが「私たちは年寄りだ。9時半には寝るよ」とおやすみの挨拶をした後も「9時半だって!マジ!?」なんて笑いあえるほど。

その後空腹を覚えるベッカ。
「おじいちゃんたちを起こしたくない」と我慢するも、10時半頃になってそっとクッキーを取りに行くことに。
監督魂を忘れないベッカはそこでもカメラを持って小声で撮影します。
「ママもこっそりおばあちゃんのクッキー食べたでしょう?私も今から同じことを……」

ウエエエエエエ!!!

突然カメラの奥に嘔吐してまわるおばあちゃんの姿が!!
苦しむ様子もなくゆっくり歩きながら吐いてまわる姿は尋常とは思えません。
驚き部屋へ逃げかえるベッカ。タイラーに声をかけますが眠っていて起きず……。
困惑するベッカだけが写されます。

翌朝ベッカがおじいちゃんへ尋ねると、昨日のおばあちゃんの様子はウイルス性胃腸炎だとのこと。
「心配ない。老人は体調を崩したりするものさ」と言われ、釈然としないながらもいちおう納得します。
そして気を取り直し、家のまわりで撮影をすることに。

タイラーに誘われ家の床下部分でかくれんぼをすることになるのですが……このシーン、床下なので這ってしか進めず、かなり窮屈な印象になります。
なんとなく見ている側も落ち着かない気持ちにさせられます。
床下を逃げて隠れるタイラーを追いかけようとするベッカ。自分を落ちつける意味もあるのか自撮りしながら作戦を練ります。
そしてカメラを振り向けると

イ ク ワ ヨ

髪を振り乱した女性がすごい勢いで這いよってくるではありませんか!!
叫び声をあげ逃げるベッカ。
なんとか隠れるも、女性の魔の手はタイラーにも忍び寄り、

ミツケタ!!ミツケタ!!

叫びながら追いかけてきます!!
恐怖して逃げ惑い、映画の画面もガクガクになりながらなんとか二人が床下を出ると……
後から続いて出てきたのはおばあちゃんでした。

本気で怯える子供たちを前に、一転「チキンポットパイを作るわね」と普通の様子に戻るおばあちゃん……。
しかし去っていく後ろ姿をよく見ると、スカートの後ろが破けて下着が丸見えに。
この出来事だけでは明確におかしいと言い切れず、ただの遊び心と言えなくはないのですが……高齢女性が衣服も気にせずあれほど人を追い回す姿を思い出すと、不穏な気持ちが拭えません……。
姉弟もお互い違和感を覚えるも、まだ言語化できず無言で肩をすくめあいます。

このシーン、外の光が入って明るいからまだ大丈夫なんですが、真っ暗だったらトラウマになってたかもしれません……(涙)

そして同じ日の深夜、姉弟は部屋の外から響く異音に怯えます。
明らかに普通ではない何かを引きずるような、引っかくような音……。
ためらいながらも、おそるおそるドアを開けると、

全裸で廊下の壁を引っかき続けるおばあちゃんの姿が。

急いで扉を閉めますが、呆然とするしかない二人……。

翌朝おじいちゃんにまた尋ねると、じつはおばあちゃんは日没症候群という病気なのだと言われます。
夜に症状の出る認知症なのだそう。
「だから悪いが9時半以降は部屋から出ない決まりにしよう。守れるか?」
「わかった、守れるわ」

着替えながらベッカに説明をし、約束をするおじいちゃんですが……着替えたのはタキシード。
「仮装パーティーに行かないといけないんだ」と言うおじいちゃんですが、そんな事実はなく……ベッカに「勘違いかも」と諭され、どうにか正気を取り戻します。(と言っていいのか……)
おばあちゃんだけでなく、おじいちゃんも通常とは言いがたい状態にあるようです……。

調べると日没症候群は実際にある認知症の症状なんですね。(夕暮れ症候群、たそがれ症候群とも)

夕方近くなると自宅や施設にいても「家に帰らなきゃ」と思ってしまったり、徘徊や落ち着きがなくなったりしてしまうそうです。

驚くことにここまでまだ火曜日(2日目)の段階なのです。
しかしまだまだ違和感のある出来事は起こり続けます。

・ベッカたちのノートパソコンのカメラ(母親とビデオ通話する手段)を汚して使えなくする。
・人ひとり入れるサイズのオーブンの奥まで入って掃除するよう言う。
・ウ●コの付いたオムツを納屋にため込んでいる。
・ボランティアしているはずの病院に行っておらず医師が訪ねてくる。
・通りすがりの人に「自分たちを見張っていただろう」と襲い掛かろうとする。
・何もない井戸の中をのぞいている。
・テレビを見て笑っていると思ったら、何もない壁を見て笑っている。なぜ笑っていたか尋ねると「暗闇さんがいるから」と答える。
・普通にインタビューをしていたのに「ママが出て行った日」について聞くと突如首を振り続け返答ができなくなる。
・銃を口にくわえている。(掃除していただけとごまかす)

などなど。
すべて書くと時間が足りませんが、全編通してずっと不穏な空気が続くのがすごいと思いました。
しかも認知症が疑われるため、どこまで「おかしい」と感じていいかがわからないのです。
病気のせいで異常な言動をしてしまったとしても、本人たちが悪いわけではないのですから……。
どこまでが病気のせいなのか、それとも病気以外のなにかが二人に影響しているのか、判然としないまま映画を観続けることになります。

ベッカたちも異常さを感じつつも、なかなか拒絶や逃げることまではできません。
とくにベッカはこの旅で祖父母から母への許しを撮影し、物事を諦めがちな母を癒す万能薬を得ることを諦められませんでした。
それでもいい加減おかしいと思い、夜のリビングに隠しカメラをしかけると、そこには……
これはぜひ自分の目でご覧ください。



以下、核心のオチまで書いています。
ここまでで興味を持った方はご自分で観たほうが楽しめるかもしれません。










よろしいでしょうか?



じつはこの祖父母は、本人たちではありませんでした。

この事実が判明するシーンは良かったですね。
母親ロレッタとやっとビデオ通話が繋がり、祖父母の様子がおかしい、迎えに来てと彼らの姿を見せると……
「あれはおばあちゃんたちじゃない」

母親が当惑する様子に、一気に映画の空気が変わりました。
ブログの最初に「ちゃんとホラー映画だった」と書きましたが、ここからは謎がわかり人間に対する恐怖に代わっており、サスペンスに近いかもしれませんね。

見ていた私もその時思い出しましたが、それまで母親にも祖父母とのやりとりを話していたのに、彼らの姿を映したのはそれが初めてだったのです。
(普通だったら最初に挨拶でもしそうなものですが、彼らの異常さに気を取られていましたね……!)
医師やステイシー(祖父母に支援してもらった女性)が訪ねてきた時もちょうど彼らの不在時ですれ違っていたんですね。

では彼らが誰なのかというと、祖父母がボランティアしていた精神病院の患者たちが祖父母を殺害し、なりかわっていたのです。
これもじつは伏線があり、途中の会話に「病院の不祥事」が出てきていましたね。(このブログを書きながら2回目を観て気づきました)

ステイシーが2回目に尋ねてきた時は、別人が住んでいることで口論になっていたのでしょう。(それか病院で顔見知りだったのでしょうか?)
彼女はかわいそうですね。祖父母を慕って来たばかりにあんなことに……。
真相を知ってからだと、タイラーの「ステイシーが帰るところ見た?」が響きます……。

ロレッタはメイソンビル警察へ電話するも繋がらず、助けに行くから外へ逃げろと言いますが、ベッカとタイラーは祖父母を演じる老人たちに捕まってしまいます。
表面的には「家族でゲームをしよう」と言われますが、姉弟が真実を知ったことを察していたのかもしれません。(これはどっちなのかわかりませんでした)

ここは無理やり逃げてしまえばいいのでは?という気もするのですが…。でももし実際に体験したら、衝撃や恐怖で固まってしまうのかもしれないですね。

老人2人とゲームをするベッカとタイラー。ベッカはゲームを抜け出し、行くなと言われていた地下室へ潜入します。
本物の祖父母が閉じ込められているのではと探しに行ったのですが……そこで見つけたのは精神病院の患者服と、本物の祖父母の死体でした。
そんな予感はしましたが、もう殺されてしまっていたんですね……。

直後、祖父(を演じていた老人。以下省略)に見つかり、もう正気を失っている祖母の部屋に閉じ込められます。
この映画で何が怖いって、この祖母役の女優さんの演技なんですよね!!
今までは部屋の中からのぞくだけだった祖母の奇行と、真正面から対峙することになります。
めちゃくちゃ怖い。
言葉は通じず、にじり寄るだけかと思いきや突如ベッドの下へ這いまわる!!そしてシーツを被って近づいて……ベッカを鏡へ打ち付け襲い掛かります!!

一方タイラーは先に祖母に殴られケガを負っており、祖父に詰め寄られ恐怖で動けなくなってしまいます。
祖父は「最初からお前が嫌いだった」と、潔癖症のタイラーの顔に使用済みのオムツをベチャリ……。
祖父は今日、家にいる全員殺すつもりなのです。
そこへ祖母から逃れたベッカが突撃!しかし返り討ちにあいそうになり、逆にピンチに。

しかしタイラーが限界突破、祖父へタックルをかまし動けなくなるまで冷蔵庫に打ち付けます。
じつはタイラーは過去フットボールの試合でタックルができず固まり、父親に良い姿を見せられなかったことを負い目に感じていたんですね。それが理由で出て行ったわけでないと頭ではわかっていても、心ではそんな気持ちになっていたのです。
それがこのシーンで体が動きタックルできたことで克服できたのだと思われます。

そんなこんなで姉弟はからくも家を脱出し、迎えに来た母と警察に保護されるのでした……。

子供たちが無事でよかったです……

ちなみにここで流れる曲、初回は「なんか変な曲だな~」と気づいてなかったのですが、中盤でベッカが「最後はこの曲を流す」と言っていた曲なんですね!
つまりこの映画はベッカの劇中作という形なのでした。
そういえば最初のタイトルシーンも唐突なBGMでしたね……伏線だったのか!
そしてその後母親との会話に続いて流れるシーンは、絶対に入れないと言っていた父親とのシーン。
それを入れたということは、ベッカも父親との離別による傷を克服したことの現れなんですね。ここはちょっとうるっときました。

しかしそれで終わりと思ったら、最後に流れるのはなぜか弟タイラーのラップシーン。
いや、なんで!?(笑)と思っちゃいますが、「弟がぜひにと言うので」というテロップで姉弟でやりとりがあったのだろうことがうかがえ、微笑ましい気分になりました。
後ろでちらちら見ながら「何やってんだか」みたいに笑うベッカもかわいいですね。

基本的にはホラーやサスペンス映画なのですが、こういった姉弟や母親の傷の克服、家族愛が見えるところが私は好きでした。
なんだかベッカとタイラーに情も湧いたりして。もしこの2人の続編があったら見に行きたいです。
役者さんも若いのに演技が上手だなと思いました。

しかし賛否が分かれるだろう部分は、精神病、認知症をホラーの仕掛けに扱っているところでしょうか。
もちろん暴力性や実際に他人を傷つけていた劇中の祖父母は犯罪を犯しているのには間違いありませんけども。
私もあまり詳しくはないですが、深夜の徘徊や記憶の混乱などは一般的な認知症かと思います。
そこをホラーとして「おかしな行動」にしていいのかはすこし難しいポイントかなと……。
身近に認知症の家族などがいる方は余計に複雑な気持ちになってしまうかもしれませんね。

わからないことへの恐怖は普遍的にありますが、ホラーの題材として扱うのは難しいですね

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